三木武吉の権謀術数が凄すぎ!大宰相2巻

吉田茂の黄金時代を迎えた第1巻の終わりから、引き続き占領期の時代から2巻が始まります。
この2巻の見どころは、何と言っても鳩山総理の誕生に命を燃やす三木武吉の執念と権謀術数!
戦前からの議員で、第1巻では公職追放のために地元の小豆島で暮らしていた老兵が立ち上がり、吉田に牙を剥く!
この本を読むまでは正直知らなかった方なんですが、冒頭の早坂氏の解説においても、1955年の自民党結成の立役者と記されています。
最強のNO.2。
さあ、どのようにして鳩山総理誕生に繋がっていくのか!?第2巻をまとめていきます!
第1部 サンフランシスコ講和条約
第一部は昭和25年から始まります。占領も5年が経ち、いよいよ講和そして独立へと吉田は情熱を燃やします。
アメリカとしても占領が長くなると反感を生んでしまうという点から早期の講和を臨む考えがある反面、混乱の続くアジア(対中ソ・反共産のため)の安全を考えた時にアメリカ軍を日本に置きたいという考えも存在していた。
1巻でもありましたが、池田蔵相の働きによりアメリカも講和に向けた動きを進め、翌年にはダレスが訪日、講和後も米軍が駐留するならば可能だという発言から、吉田も手ごたえを感じる。
しかし、その数日後・・・。北朝鮮が38度線を越えて韓国に進軍。朝鮮戦争の勃発です。
国連の決議も無視して南進する北朝鮮に対し、アメリカも軍を派遣。泥沼の戦争へと向かいます。
アメリカも対日講和どころではないと踏む吉田に対し、ダレスは日本を反共の基地とすべく再軍備を求めてくる。憲法を盾に断る吉田だが、自警のため警察予備隊7万5千人を整備することに。しかし、吉田は軍隊にしてはならないとの思いを強くする。
国会答弁においても、軍隊ではなく警察力とする。そこには、軍隊と言えばアメリカから憲法改正を指示され、本格的な再軍備を要求されることが分かっていたからだ。この理論は今も自衛隊を規定づけるものになっていますが、当時の状況からは正しい判断であったと思います。
翌月、警察予備隊が誕生。ここでもGHQは警察予備隊を朝鮮戦争へと結び付けようとするが、吉田は憲法を盾に拒否。ダレスにも講和との条件に出されるが、これも躱す。これが無ければ、戦後日本は全く違うものになっていたでしょう。
そんな中、鳩山一郎は脳溢血で倒れてしまう・・。
なんてツキのない。。
そして、昭和26年9月8日(日本時間では9日)、サンフランシスコ講和条約が調印され、日本は独立を果たします。それと同時に、吉田が1人で調印をしたものが日米安保条約であった。
講和という大役を果たせば退陣すると考えていた三木だが、吉田は引き続き総理の座にい続ける。
そして、ここから三木の死闘が始まる・・・。
まず、三木は自由党内の反主流派をまとめ、幹事長人事を潰す。これがジャブですね。
それに対し、吉田は石橋湛山と河野一郎の除名を決定する。三木に対しては、第1次吉田内閣の際の恩義から除名はしなかった。
そして、吉田は鳩山一派の虚を突くかたちで、抜き打ち解散を行う。
結果として自由党は議席を減らすが、鳩山派も打撃を受ける。しかし、鳩山派によって賛否が左右される状況となる。(キャスティング・ボードを握るという)
そして、三木に会談を求めた松野鶴平に対し、河野・石橋の除名解除などを条件に、三木は吉田首班指名に協力する約束を取り付ける。
ここで第1部は終わりです。
いよいよ、三木の戦いが始まりました!
しかし、1巻で権力にしがみつく幣原を見て「権力はこうも人を変えるのか」といった吉田も、同じようになっていく・・・。
権力の座というものは、それほどまでの魔力があるのでしょうか。
第2部 鳩山内閣の誕生
いよいよ始まった三木の戦い。タイトル的にはネタバレなんですが、まあこれは歴史的事実。そこに至るドラマが凄いんです。
第2部は本当に読み応えアリ!
第四次吉田内閣は、鳩山派の協力もあり組閣される。
しかし、その後の国会により池田通産相の発言が問題視される。
野党の提出した不信任案に鳩山派が欠席したことで、池田は罷免されてしまう。
同じ事態になれば、補正予算も成立しない状態となった吉田内閣は、緒方竹虎官房長官が三木と会談を行う。
その後、吉田と会談した三木は、放置されていた河野・石橋の除名解除と、鳩山派を党三役に就けることを取り付ける。
補正予算可決後、すぐに広川弘禅を焚きつけにかかる。「吉田の下にいては、緒方が次で君が総理になることはない」と。
翌年の通常国会。吉田は予算委員会で「バカヤロー」と言ってしまう。
これを好機と見る三木は、吉田総理の懲罰動議をあげるように社会党を動かす。
同時に広川と改進党も動かし、事情初の総理大臣への懲罰が成立する。
次は内閣不信任案がどうなるかだが、三木は吉田総理・鳩山総裁の形で決するよう絵を描くが、結局佐藤幹事長は吉田に繋がない。止むを得ないと判断した三木は同士22名と脱党。不信任案も可決され、先の選挙から半年で解散となった。
議席数を大きく減らし半数を割った自由党だが、何とか吉田首班指名にはこぎ着ける。
鳩山や石橋は復党するが、三木ら8人は日本自由党として復党はしなかった。世間はこれを「8人の侍」と言った。なお、黒澤明の七人の侍は翌昭和29年の発表でした。
昭和29年も、吉田内閣は嵐に見舞われる。保全経済会事件と造船疑獄により、検察は佐藤栄作幹事長の逮捕許諾を要請。
大荒れとなった政界では、新党結成の機運が高まり、自由党・改進党・日本自由党が交渉に入る。しかし、反吉田の世論の高まりもあり、交渉は決裂。
これを待っていた三木は、岸信介を抱き込み反吉田派をまとめにかかる。
そして、鳩山を総裁とする日本民主党が誕生した。
日本民主党は自由党に迫る勢力となり、吉田の内閣不信任案が成立する。総辞職か解散かを巡り自由党内でも検討が進められたが、総裁予定の緒方が総辞職を主張し、その方向となる。再軍備や憲法改正を主張する鳩山らに対して政権を渡したくない吉田は、解散をすれば勝ち、緒方内閣となるとまくし立てるが、認められない。
そして、吉田は総辞職。ついに、鳩山総理が誕生するのだった・・・。
三木の執念に震える
ついに鳩山総理が誕生!権謀術数を駆使して、三木は吉田を倒しました。
2度の総選挙を経て。すごい執念。
これが成ったのは、「総理大臣になりたい」「よいポストが欲しい」という各議員の出世欲。これを上手くつつき、時に社会党ら野党も巻き込む人たらしが三木の真骨頂だったのでしょう。
さて、鳩山内閣の最大の功績は日ソ共同宣言。
そこにどう向かって行くか。
3巻も楽しみですね!
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